独身時代の引っ越しを楽しむ哲学|住む場所で人生をデザインする
はじめに:「なぜそんなに引っ越すの?」という質問への答え
「12回も引っ越したの?なんで?」と聞かれることが多い。
転勤族ではないし、借金を逃げているわけでもない。「好きだから」という答えが最も正直だ。もう少し詳しく言えば、「住む場所を変えることで人生の可能性が広がると信じているから」だ。
独身で、身軽で、自分の意思で住む場所を選べる今の状態は、人生の中で最も自由度が高い時期だと思っている。この自由を最大限に活用したいという思いが、引っ越しを繰り返す原動力だ。
独身であることの「住む場所の自由」
家族がいると、住む場所の選択肢は大きく制約される。
- パートナーの職場へのアクセス
- 子どもの学校区
- 親の近く
これらの条件が加わると、住む場所の選択肢は一気に狭まる。独身の今は、これらの制約がない。
「どんな生活をしたいか」「どんな人と出会いたいか」「どんな街の空気を吸いたいか」という、純粋に「自分にとって最高の場所」を選べる。これはかなり贅沢な特権だ。
引っ越しの費用は確かにかかる。単身・近距離の引っ越しでも閑散期で3〜5万円程度、繁忙期なら10万円を超えることもある。でもそれを「自分の人生をデザインするためのコスト」と考えると、高くはないと感じてきた。
住む場所でデザインできる「3つの要素」
1. ライフスタイル
住む場所によって、自然と身につくライフスタイルが変わる。
- 都市中心部:歩いてどこでも行ける・外食・夜の選択肢が豊富
- 閑静な住宅地:自炊が増える・朝型になる・散歩が習慣になる
- 海辺・山辺:アウトドアが日常になる・ゆったりした時間感覚
「理想のライフスタイル」を先に描いて、それが自然に実現できる街を選ぶという考え方ができる。
5回目の引っ越しのとき、「本をたくさん読んで、自炊して、ゆっくり過ごす生活」を理想として、図書館と公園と自炊できる広めのキッチンのある物件を選んだ。引っ越してから半年で、目指していたライフスタイルが自然に身についた。
2. 出会う人
同じ趣味・価値観を持つ人が集まる場所がある。
- クリエイター・デザイナー → 東京の特定のエリア(下北沢・高円寺など)
- 起業家・エンジニア → 渋谷・五反田・恵比寿周辺
- 自然・農業が好きな人 → 地方移住者が多いエリア
「こういう人たちと繋がりたい」と思ったとき、その人たちが集まる場所に住むことで、出会いが自然に生まれる。
8回目の引っ越しのとき、ちょうどフリーランスとして仕事を始めようとしていた。コワーキングスペースが多く、フリーランスが集まるエリアに引っ越したことで、半年以内に仕事上の繋がりが一気に広がった。住む場所が人脈を変えるという実感を持てた瞬間だった。
3. キャリア・仕事
住む場所は仕事の機会にも影響する。
特定の産業・コミュニティが集まる場所に住むと、その業界の人と繋がりやすくなる。リモートワークが普及した今は特に、「どこに住んでも仕事ができる」という人が増えているが、だからこそ「なぜここに住むのか」の選択が重要になってきている。
「職場に近いから」というだけで場所を選ぶ時代は終わりつつある。通勤だけを考えるのではなく、「その場所に住むことで何が得られるか」という視点で選ぶことをおすすめしたい。
「引っ越しでデザインする」6つのアプローチ
アプローチ1:「新しいスキルを身につけたい」ときの引っ越し
何か新しいスキル・習慣を身につけたいとき、そのスキルが「当たり前になっている環境」に引っ越す。
料理を上達させたいなら、市場が近く食材が豊富な街。英語を使いたいなら、外国人が多く住むエリア。ランニングを習慣にしたいなら、走りやすい公園が近い場所。
意識的に「その環境に自分を置く」という戦略的引っ越しだ。
アプローチ2:「今のルーティンをリセットしたい」ときの引っ越し
仕事・人間関係・生活パターンが固まりすぎて、変化を起こしたいと感じたとき、引っ越しは最強のリセットになる。
新しい場所に引っ越すと、日常のルーティンが強制的に変わる。通勤ルートが変わり、行きつけの店が変わり、周囲の顔ぶれが変わる。この「強制リセット」によって、慣性で続けていた行動パターンが解除され、新しい選択ができるようになる。
4回目の引っ越しは、まさにこれだった。同じ会社・同じ人間関係・同じ日常のループに飽き飽きしていたとき、会社から少し離れたエリアに引っ越した。通勤電車が変わり、乗り換え駅が変わり、駅周辺のカフェも変わった。生活の「景色」が変わるだけで、思考がリフレッシュされる感覚があった。
アプローチ3:「コミュニティに入りたい」ときの引っ越し
趣味や価値観が合うコミュニティに属したいとき、そのコミュニティのメンバーが多く住むエリアに引っ越すのは有効な手段だ。
コワーキングスペースが多いエリア・クラフトビール好きが集まる街・音楽シーンが活発な地域…。住む場所を変えることで、自然とそのコミュニティの一員になれる。
アプローチ4:「節約・貯蓄・FIREを目指す」ときの引っ越し
生活コストを下げてお金を貯めたい時期に、意図的に安い地域に引っ越す。
都市から地方へ。高家賃エリアから低家賃エリアへ。「一時的に生活コストを下げる」期間を設けることで、まとまった資産を作れる。
東京都心の1Rが10万円前後するのに対し、東京から電車で1〜2時間圏内のエリアなら同じ広さで4〜6万円台も珍しくない。家賃だけで月3〜5万円、年間で36〜60万円の差になる。
アプローチ5:「体験を積みたい」ときの引っ越し
知らない地域・文化・環境に身を置く経験は、視野と思考の幅を広げる。
同じ日本でも、東京と地方では生活の常識が違う。首都圏育ちの私が地方都市に住んだとき、それまで当たり前だと思っていた価値観がいくつも崩れ、新しい視点が生まれた。
地方では車が必須な生活・近所付き合いが濃いコミュニティ・物価の違い。これらを体験したことで、「都市での生活が当たり前ではない」という感覚が生まれた。これは20代のうちに経験しておいて本当によかったと思っている。
アプローチ6:「充電・休息」のための引っ越し
忙しい都市生活を離れて、静かな場所で充電する期間を設ける引っ越しもある。
自然が豊かで、人の密度が低く、静かな場所。「頑張る引っ越し」ではなく「休む引っ越し」だ。
11回目の引っ越しは、仕事で疲弊していたタイミングだった。都心から少し外れた、緑が多く静かな住宅地に引っ越した。通勤時間が少し長くなったが、朝起きると鳥の声が聞こえる環境に変わり、心の余裕が戻ってきた感覚があった。「生産性を上げる引っ越し」ではなく「回復するための引っ越し」は、長い目で見ると非常に有効だと思っている。
独身引っ越し生活のリアル:失敗と成功
失敗:「なんとなく」の引っ越しは虚しい
3回目の引っ越しは「家賃が安いから」という理由だけで選んだ場所だった。特にテーマもなく、単に安いというだけで選んだその場所は、1年間「ただ住んでいた」という感覚しか残っていない。
引っ越しに「目的・テーマ」がないと、それはただの住所変更になってしまう。
成功:「○○をするための引っ越し」は豊かになる
7回目の引っ越しは「とにかく本を読んで、思考力を高めたい」というテーマで場所を選んだ。図書館まで徒歩5分・カフェが充実・落ち着いた住宅地。
この引っ越し後の1年間は、読んだ本の量・質ともに人生で最高の年になった。その知識が後のキャリアチェンジにも影響した。
「何のための引っ越しか」を明確にすることで、引っ越し後の生活が豊かになる。
引っ越し先を選ぶときの実践的なチェックリスト
「この場所に引っ越すべきか」を判断するための視点を整理しよう。
- 生活環境:スーパー・病院・銀行など生活インフラが揃っているか
- コミュニティ:入りたいコミュニティ・関わりたい人が集まるエリアか
- 交通:通勤・移動の利便性は許容範囲か
- 家賃とのバランス:収入の25〜30%以内に収まるか(一般的な目安)
- 街の雰囲気:昼と夜、週末と平日に実際に歩いてみて自分に合うか
物件を探す前に、「なぜその街に住みたいのか」をできるだけ言語化しておくと、物件探しがスムーズになる。
「いつまで引っ越し続けるのか」という問いへの答え
30代になって、「そろそろ定住するべきでは?」という価値観との葛藤もある。
でも今の時点での私の答えは「引っ越しは目的の手段であり、定住も目的の手段だ」ということだ。定住することに明確な理由があるなら定住する。引っ越しすることに意味があるなら引っ越す。「世間的に」という理由だけで定住するのは違うと思っている。
独身時代は、この判断を最も自由にできる時期だ。
まとめ:住む場所を「選んでいる」という意識を持つ
独身時代の引っ越し生活を楽しむための核心は「住む場所を受動的に決めるのではなく、能動的に選ぶ」という意識だ。
- 何のためにここに住むのか
- この場所で何を得たいのか
- どんな自分になりたいのか
この問いを持って住む場所を選ぶと、引っ越しが「人生のデザイン行為」になる。
引っ越しのたびにかかる費用・手間は確かに大きい。しかし、12回の引っ越しを通じて実感してきたのは、「住む場所の選択は、人生の選択に等しい」ということだ。初めての一人暮らしの部屋選びも、ただ「家賃が安い」「会社から近い」だけで選ぶのではなく、「どんな生活をしたいか」から逆算して選んでほしい。独身の今だから持てる自由をフル活用して、住む場所で人生をデザインしてほしい。
Author
越野さや
@hikkoshi_lab無類の引っ越し好き。これまで3都道府県で12回単身引っ越しをし、総額引っ越し費用は500万円を超える。引っ越しによって人生を変えてきた。人生を変えるには住む場所を変えるべきと思っている派。