12回引っ越して気づいたこと|住む場所が人生を変える話
はじめに:12回引っ越して初めて分かったこと
引っ越しを12回経験して、今振り返ると一つの確信がある。「住む場所が人生を変える」ということだ。
これを言うと「大げさじゃない?」と言われることもある。でも、本当にそう思っている。東京に住んでいたとき、大阪に住んでいたとき、地方の小さな市に住んでいたとき、それぞれで「自分」が違っていた。行動パターンが変わり、出会う人が変わり、考え方が変わった。
引っ越しは「住所の変更」ではなく、「人生のバージョンアップ」だったと、今なら言える。
初めての一人暮らしや最初の引っ越しは、設備や家賃ばかりが気になるものだ。でも12回を経験してわかったのは、「どの街に住むか」という選択の持つ重さだ。この記事では、その気づきを率直に語っていきたい。
気づき1:街の「エネルギー」が自分に乗り移る
住む場所の雰囲気は、自分の行動や思考に驚くほど影響する。
東京の都心に住んでいた3年間、常に「次に何をするか」を考えていた。周囲の人が仕事・チャレンジ・スキルアップを当たり前のようにこなしていて、「自分も何かしなければ」という良い意味でのプレッシャーがあった。新しいカフェができれば行ってみて、セミナーがあれば参加して、「動いていることが普通」という空気があった。
対照的に、緑豊かな地方都市に住んでいた2年間は、時間の流れが違った。仕事終わりに川沿いを散歩して、週末は山に行って、料理を丁寧に作った。「今ここにいること」を楽しむ感覚が育った。
どちらが良いかではない。それぞれの街のエネルギーが自分に影響を与えて、その時期にしか得られない成長があった。
住む場所を選ぶとき、「今の自分に何が必要か」を考えることが大切だ。 新しい刺激が欲しいなら都市部、ゆっくり自分と向き合いたいなら自然に近い場所。「スペックが良いか」だけでなく、「その街が今の自分に合うか」という視点が、実は一番重要だと思っている。
気づき2:「環境が人を作る」は本当だった
7回目の引っ越しで、意図的に「読書家が多そうな街」に住んでみた。図書館が有名で、書店が多く、カフェで本を読んでいる人をよく見かける街だ。
引っ越し前は月1〜2冊しか読まなかった。引っ越し後、周囲の雰囲気に影響されて読書が習慣になり、1年後には月5〜6冊読む人間になっていた。本から得た知識が仕事に活き、転職のきっかけにもなった。
環境は意思力より強い。「良い習慣を身につけたい」と思ったとき、意志力で頑張るより「その習慣が自然になる環境に引っ越す」方が、実は近道かもしれない。
これは行動経済学でも「デフォルト効果」として知られている。人は意識的に選択するよりも、「周囲がやっていること」を自然と真似する傾向がある。だとすれば、住む場所=「何が当たり前の環境か」を決める選択でもある。
ジムに行きたいなら、ジムが多い街に住む。アウトドアを楽しみたいなら、自然が近い場所に住む。それだけで、意志力に頼らず習慣が変わることがある。
気づき3:「家賃が高い場所」の本当のコスパ
「家賃を抑えるために少し不便な場所に住む」という選択は、表面的には賢い節約に見える。でも12回の引っ越し経験から、必ずしもそうではないと気づいた。
6回目の引っ越しで、職場まで1時間以上かかる郊外の安い物件に住んだ。家賃は都心より月3万円安かった。でも、往復2時間以上の通勤時間が毎日続いた。
1ヶ月の平日を約22日として計算すると、通勤の往復2時間×22日=月44時間。1年では528時間。これは実に22日分のフルタイム労働に相当する時間だ。
この時間をどう使えたかを考えると、節約した家賃(月3万円×12ヶ月=年36万円)を上回る「時間コスト」を払っていた可能性がある。加えて、疲弊した状態で帰宅するため、副業・勉強・趣味への時間もほぼなくなった。
「時間・エネルギーのコスト」まで含めて住む場所を考えると、「少し高くても便利な場所」の方が豊かに生きられることがある。
もちろん、これは人によって異なる。通勤中に読書や音楽を楽しめる人、電車内がむしろ集中できる人もいる。大事なのは「家賃だけ」で比較するのではなく、通勤時間・疲労感・使える時間まで含めて総合的に判断することだ。
気づき4:「人間関係」は住む場所で大きく変わる
住む場所が変わると、自然と関わる人間が変わる。
東京にいたとき、周囲はIT・デザイン・起業関連の人が多かった。大阪にいたとき、飲食・エンタメ・地域密着型のビジネスをやっている人と多く出会った。地方に住んだとき、農業・伝統工芸・地域活性化を真剣に考えている人たちと繋がれた。
どこで出会った人も、今でも大切な友人や仕事仲間だ。でも、「どの場所に住んでいたか」によって、出会える人の種類が大きく異なる。
今の自分がどんな人と出会いたいかを考えて、住む場所を選ぶことができる。
20代の一人暮らしで住む場所を選ぶとき、「どんな人が近くにいるか」という視点は意外と盲点になりがちだ。家賃・立地・設備は数字で比較できるが、「その街にどんなコミュニティがあるか」は見えにくい。しかし長い目で見ると、人間関係こそが住む場所から得られる最大の資産になることが多い。
気づき5:「引っ越しできる状態を保つ」ことの価値
12回引っ越してきて気づいた逆説的な真実がある。「いつでも引っ越せる状態でいること」が、実は生活の自由度を高めるということだ。
物を増やしすぎない。一つの場所に依存しすぎない。それだけで「もっと良い場所があったら移れる」という選択肢が生まれる。
これは別に、どこにでも気軽に引っ越せと言いたいわけではない。「引っ越しという選択肢が常に手の届くところにある」という心理的な余裕が、今いる場所での生き方にもプラスに働くという話だ。
「ここを出ることもできる」という自由があるからこそ、「ここにいる選択」に納得感が生まれる。縛られているから今の場所にいるのと、自分で選んでいるから今の場所にいるのとでは、毎日の満足感が大きく違う。
気づき6:「街への感謝」を感じるようになった
引っ越しを何度も経験すると、今いる街への感謝が自然と湧いてくるようになった。
「この街にはあのカフェがある」「この公園は四季が美しい」「あの商店街の八百屋のおじさんが好き」…。普段は当たり前すぎて気づかない街の良さが、「いつか離れる」という前提で見ると鮮明になる。
引っ越し直前の数日間、今の街をゆっくり歩くことがある。「あと何回ここに来られるだろう」と思いながら見ると、見慣れた風景が急に輝いて見えることがある。これは引っ越し経験を重ねて初めて得られる感覚だと思う。
引っ越し経験者が「今いる場所を大切にできる」のは、「場所はいつか変わる」ことを知っているからだと思う。初めての一人暮らしを始める人には、ぜひこの感覚を最初から持ってほしい。今住んでいる場所を「通過点」として軽く扱うのではなく、その街で過ごす一日一日を大切にすることで、引っ越した後も豊かな思い出が残る。
気づき7:「どこに住むか」より「どう住むか」が重要
12回の引っ越しを通して、最終的に行き着いた結論がある。
「どこに住むか」は大切だ。でも、それ以上に「どこに住んでいても、自分がその場所でどう生きるか」が大切だ。
最高の立地・最高の街に引っ越しても、家の中に引きこもって不満を言い続けていたら、その場所の良さは享受できない。逆に、一見「不便な街」でも、自分が積極的に街に関わり、人と出会い、その場所の面白さを見つければ、豊かな生活ができる。
「住む場所が人生を変える」と言ったが、正確には「住む場所を活かす自分が人生を変える」だ。
まとめ:12回引っ越してたどり着いた哲学
12回の引っ越しから得た気づきをまとめると:
- 街のエネルギーは自分に影響する:今の自分に必要なエネルギーを持つ場所を選ぶ
- 環境は意思力より強い:身につけたい習慣がある場所に住む
- 時間コストまで含めて家賃を考える:便利な場所には「時間」という価値がある
- 住む場所で出会う人が変わる:どんな人と出会いたいかで住む場所を考える
- 引っ越せる状態でいることが自由につながる:物を減らし、選択肢を保つ
- 今いる場所への感謝を忘れない:「いつか離れる」前提で見ると見えてくるものがある
- どう住むかが最も重要:場所より、その場所での生き方
引っ越しを単なる「コストと手間」として捉えるのではなく、「人生の方向性を選ぶ行為」として考えてみると、引っ越しがより深い意味を持ってくる。
初めての一人暮らしで最初の物件選びをしているあなたへ。「家賃・立地・設備」だけで物件を選んでいたら、一歩立ち止まって「この街でどんな自分になりたいか」も考えてみてほしい。それだけで、引っ越しの意味が大きく変わるはずだ。
Author
越野さや
@hikkoshi_lab無類の引っ越し好き。これまで3都道府県で12回単身引っ越しをし、総額引っ越し費用は500万円を超える。引っ越しによって人生を変えてきた。人生を変えるには住む場所を変えるべきと思っている派。